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『繭の城』蓑田雅之・著(2024年4月18日発行)

¥2,200

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もう無理。気が狂いそう……。
正直、母親として限界に近づきつつあることを自覚する。

いつ、どこで間違ったのだろう? 私の何がいけなかったのだろう?

いくら考えても答えは見つからない。そして、答えを見つけようとするうちに、気が狂いそうになってくる。

何が悪いの? なぜこんな目にあわなきゃならないの? お願い、教えて。私のどこがいけなかったの? なんでこんなことになっちゃうの?

ふと天井を見上げる。
ひっそりと静まり返ったこの真上、2階のいちばん西側に息子の部屋がある。そこに秀一がいる。いまもいる。この平日の昼ひなかに。

秀一はこの冬に16才になった。
本来なら高校1年生の年齢だけど、学校には通わずに家にいる。中学2年生の春から、かれこれ3年近くも。
家族との交渉をすっかり断ち、いまは完全にひきこもっている。

公認心理士の資格を持つカウンセラーに家に来てもらったこともある。
学生風のレンタルフレンドにお願いしてみたこともある。
夫が勝手に依頼した引き出し屋まがいのNPO法人まで、試せるものはありとあらゆるものを試した。
でも、結果はいつも同じ。秀一が部屋から出てくることはない。
他に何をしたらいいのかわからない。もう完全にギブアップ。

部屋の扉を叩こうが、外から声をかけようが、うんともすんとも返事がない。
階下に下りてくるのはトイレを使うときだけ。
それも家族の寝静まった深夜にこっそり下りてくるらしい。

毎日毎日、私が二階に上がってドアの外に食事を置いていく。
毎日毎日、私はドアの外に置かれた空の食器を片づける。
「いただきます」も、「ごちそうさま」もない。
部屋は静まり返ったままで、ドアを叩こうが、声をかけようが、中から返事が返ってくることはない。

いつまでこんなことが続くのだろう?
この延々と続く無間地獄のような状態は、いつになったら解決できるんだろう?

わかっている。待つしかない。それはもう、わかってる。
だけど、やっぱりできない。待てない。待つのが苦しい。
頭ではわかっているのに、心が苦しい。

ああ、一体どうすればいいんだろう?


――そう思っていました。それはもう、長いこと、ずっとずっと。

でも、誤解しないでください。

私はこれを悲しい物語にしたいわけではありません。
かわいそうだと思ってもらいたいわけでもありません。
そんな必要はまったくないのです。
なぜならこの話は絶望ではなく、希望で終わるからです。

それは私の人生をまったく変えるような、一風変わった支援団体の女性・カケコさんとの出会いのおかげでした。
夢にも思わなかった「不登校生の母親をやめること」をカケコさんに教わったのです。


そうだ。この際、いっそのこと……。

「母親、やめちゃおうかしら」

私がそう言うとカケコさんは胸の前で小さく拍手する。
「そうです。その勢いです。やめちゃいましょう。そして弓子さんのやりたいことをやりましょう」

そうか。そうなんだ。
なんでもかんでも親の私が背追い込む必要なんてないのだ。

もうそれはそれは、本当に濃密な半年間だった。

カケコさん、ありがとう。
この家はもう大丈夫ですよ。

夫も私に問いかけてくる。

「もう大丈夫だよな、秀一は」
「ええ、もう大丈夫よ」

そう、私たちの子だもん、大丈夫に決まってる……。

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《驚きの小説でした》(phonkichiさん)

二つの違う小説が収録されているのかと思いましたが、ひと組の親子の同じ時空のお話とわかり驚きました。

「心のケガを甘くみてはいけません」
「何もしないからこのままなんじゃなくて、何かしてしまうからこのままなんです」
「いったん待つことをやめてみませんか」

不登校のことをこれから理解される方にとって、新しい視点がいっぱいあると思います。本当の子育てを知って、良い親子関係を築いていかれる様子が目に浮かびます。
今まで読んだことがないタイプの、驚きの小説でした。


【不登校のことを、頭ではなく、心から理解できるようになる本】

頭では不登校・ひきこもりを受け入れたほうがいいことはわかる。

頭ではよくわかる。わかっている。
でも、どうしても、どうしても心が追いつかない……。

そう悩む人にこそ、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

『もう不登校で悩まない! おはなしワクチン』『「とりあえずビール。」で、不登校を解決する』に続く、コピーライター・蓑田雅之さんの3冊目となる本書。
今回は不登校・ひきこもりを題材にしたある家族の物語で、小説の形で描かれています。

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家族と一切の交流を絶ち、一人で部屋にこもり続けている16歳の少年ニキア。
いつも天気が荒れる日にやってくる一風変わった支援団体の女性に、ニキアは次第に興味を引かれていく。
ドア一枚を隔てた向こう側にいる、顔を見たこともない「その人」。
彼女の不思議な一人語りを聞くうちに、ニキアの心に少しずつ変化が生まれ――。
(『繭の城』)

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「子どもの不登校・ひきこもり」という問題に直面した一人の母親、弓子。
息子の不登校を解決するためにやってきたはずなのに、「とくに解決はしませんよ」と言い放つ風変わり極まりない支援団体の女性。

なぜ「おかあさんを一時やめること」が、そんなにも重要なことなのか?
そもそも「母をやめる」とは一体、どういうことなのか?

支援団体の彼女との関わりを通して徐々に自己の本質に向き合い、弓子は「不登校生の母親をやめること」が腑に落ちていく。
「なんでもかんでも親の私が背追い込む必要なんてないのだ」と。
(『母をやめる』)

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『繭の城』『母をやめる』という2篇の小説が収められた本書。その最大の特徴は、物語が「当事者」と「保護者」の2つの視点で進むことです。

最初に『繭の城』でニキアから見た不登校・ひきこもりが描かれたあと、続く『母をやめる』では母親の弓子の視点に切り替わります。

両者をつなぐのは風変わりな支援団体の女性、カケコです。

当事者と保護者双方の視点から読み解く中で、不登校・ひきこもりに対するカケコの一見理解しがたい言動の意味が少しずつ紐解かれていきます。

著者の蓑田さんは本書について、「あとがき」でこう語っています。

“子どもが不登校になって難しいのは、心の奥から湧いてくる感情への対処です。得体の知れない不安や心配、ときには恐怖に近い感情に見舞われて、子を見守る親を悩ませます。
こういうネガティブな感情は、頭では分かってもなかなか消し去ることができません。理屈と違い、勝手にふつふつと心に湧いてきてしまうからです。
このような御しがたい感情に対処するには、どうすればいいか。そんな思いから生まれたのが本書です。不登校のことを、頭ではなく、心から理解していただきたいと願って書きました。”

ストーリー仕立てのため感情移入しやすく、関わり方のコツも非常にわかりやすくなっています。

読み終わったときには自然と「うちの子だもん、大丈夫に決まってる」――作中の弓子と同じように、あなたにもきっとそんな思いがあふれてくると思います。

固く閉ざされた少年の心のドアをそっとノックしてきた「ある人」。
彼女をめぐって静かに大きく進んでいく、家族の成長と再生の物語です。

不登校のことを、頭ではなく、心から理解するためにも――。

ぜひ本書を手に取って読んでみてください。

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蓑田 雅之(みのだ まさゆき)

コピーライター。
「東京サドベリースクール」の元保護者。子どもがオルタナティブスクールに通うようになり、従来の学校教育のあり方に疑問を持ち、教育分野の研究に着手。自立した人間を育てるための保護者のあり方を探究するとともに、各地でお話し会を開催。また、企業や保育園・幼稚園にて、不登校を理解するための「おはなしワクチン」の活動を続けている。
著書『もう不登校で悩まない!おはなしワクチン』『「とりあえずビール。」で、不登校を解決する』(共にびーんずネット)

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『繭の城』
◆著者:蓑田雅之
◆四六判 236ページ
 表題作のほか1編を収録
◆2024年4月18日発売開始
◆特典:送料無料
◆90日間返金保証(ご満足頂けない場合、購入後90日間以内であれば、代金は全額返金いたします|ただし一度に複数冊の注文をした場合は返金保証対象外となります)

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